はま寿司は衛生管理の基本姿勢を重視しつつも、洗剤付着や異物混入、食材期限の不備という重大な事例から運用課題が浮かび上がっています。
はま寿司は過去の不祥事や衛生トラブルを通じて、企業全体としての衛生管理体制を再構築し、消費者への信頼を取り戻すための対策を強化してきました。
本記事では不祥事後の対応と信頼回復策にも視点を広げて解説いたします。
はま寿司の衛生管理に対する基本姿勢

はま寿司が最も重視しているのは「安全性の確保」です。全国に展開する大規模チェーンだからこそ、個々の店舗での細やかな管理だけでなく、全社的に統一された仕組みが必要とされています。
その中心となるのがHACCPに基づいた管理手法です。HACCPは食品製造や調理の工程を分析し、危害要因を管理する国際基準であり、多くの外食産業が採用しています。
はま寿司では、HACCPの概念を取り入れると同時に独自の「使用期限」という考え方を設けています。
これは、一般的な消費期限を基準としつつ、実際の店舗運営環境に即した安全基準を設定するために導入されました。
この期限は、食材が微生物の増殖にさらされやすい条件下で実験を行い、その結果に基づいて導き出されたものです。従来の基準よりも厳格に算定することで、店舗運営においてリスクを最小限に抑えることが可能となっています。
さらに、店舗現場では使用期限を1日4回確認するシステムを導入し、基準を超えた食材やラベルが貼付されていない食材はその場で廃棄し、処理記録を残す運用が徹底されています。
この仕組みによって、期限切れの食材が顧客に提供されるリスクを大幅に抑制しています。
主な衛生トラブル事例と原因
どれほど厳格な衛生管理を導入しても、人為的な逸脱や不注意によって事故が発生する可能性は残ります。
はま寿司においても、いくつかの不祥事が明らかになっており、それらを踏まえた改善策が今後の成否を分ける課題になっています。
洗剤付着による提供事故
2025年8月には宮城県の店舗で、子どもがデザートを食べた後に体調不良を訴える事故が起きました。
問題となったのはバニラアイスの容器に洗剤が付着していたことです。
調査の結果、従業員が冷凍庫の上に清掃用具を置いたことで洗剤が冷凍庫内に漏れ、それが直接的な原因となりました。事故を受けて、該当製品は直ちに廃棄され、冷凍庫の清掃が実施されました。
また、従業員へのマニュアル遵守の再教育も行われ、同様の事故が再発しないよう徹底策が講じられています。
しかし一方で、消費者にとっては大きな不安を与える出来事であり、単なる再徹底ではなく仕組みの再構築が求められます。
異物混入によるトラブル
2025年4月には、大分県の店舗で「まぐろの大葉はさみ揚げ」に吸水シートが混入する異物混入トラブルが発生しました。
調査では、食材を扱う洗浄機内部に異物が残存していた可能性が指摘されました。原因の特定後、目視確認の強化と従業員の教育プログラム改訂が行われましたが、食品業界全体が直面する「完全な防止の難しさ」を示す事例でもありました。
食材の期限管理の不備
2023年に報道された不祥事では、郡山の店舗において「使用期限」を形骸化させた運用が問題視されました。
具体的には、外見に問題が見られない食材を対象に、ラベル交換によって期限を延長する不適切な対応が行われていたのです。これはHACCPや独自基準の意図に反する行為であり、消費者の安全を脅かす可能性を孕んでいました。
本社はこの事案を受けて、事象の発生を単なる店舗の問題にとどめず、全体的な運営体制の欠陥と位置づけました。教育体制の刷新と改善策の徹底が進められ、期限管理の重要性が再度強調されています。
不祥事後の対応と信頼回復策
速やかな対応と公式声明
はま寿司は衛生トラブル発生後、迅速に公式ホームページで謝罪と経過報告を公表しています。
その内容には、マニュアルの再徹底や全国店舗への管理強化が明記されており、再発防止に向けた企業姿勢が示されています。スピード感を持った情報公開は消費者への第一歩となり、社会的責任を果たす上で欠かせない対応といえます。
顧客の声と信頼の重み
ただし、公式声明が行われたとしても、一度失われた信頼を取り戻すのは容易ではありません。
実際に異物混入や期限管理不備が起きた際には、「他の商品への不安が広がる」といった声が消費者の間で広がっています。食品は直接的に健康へ影響するため、心理的な不安が継続的な信用低下につながることもあります。
この課題を乗り越えるには、誠実な対応とともに、実効性のある改善策が鍵となります。
なぜ続発するのか?その背景を探る
2025年の洗剤事故は、数か月の間に3件目となる重大トラブルとされています。
業界関係者からは、社内の衛生意識や従業員教育が十分に行き届いていないのではないかとの指摘も出ています。
全国に数百店舗を展開する大規模チェーンにおいて、一律の管理マニュアルを実際の現場に浸透させるのは容易ではなく、教育の再構築が急務となっています。
まとめ
はま寿司は衛生管理を改善するため、独自基準の「使用期限」を導入し、HACCPの手法を活用しながら安全性の維持に努めています。
しかし、過去の不祥事の通り、制度設計が十分であっても現場運用の逸脱が生じれば消費者は被害を受け、信頼は揺らぎます。異物混入や洗剤付着といった事故は、食品を扱う企業にとって致命的なリスクとなり得ます。
したがって今後は、ルールの単なる再徹底に加え、従業員教育の刷新や管理体制の実効性向上が重要なカギになります。
消費者に安心して利用してもらうためには、透明性を高める情報公開や現場に根付いた安全文化の確立が不可欠です。はま寿司がこれらの課題を真剣に解決することができれば、長期的な信頼回復につながるでしょう。